ステーブルコインのリスクにFSOCが改めて警鐘
アメリカの金融安定監視評議会(FSOC)は、2024年12月6日に発表した年次報告書の中で、ステーブルコインに対する懸念を改めて表明しました。価格が比較的安定していることから、暗号資産(仮想通貨)市場において重要な役割を担いつつあるステーブルコインですが、その裏には様々なリスクが潜んでいます。

市場の寡占化とシステムリスク
FSOCが特に懸念を示しているのが、ステーブルコイン市場における一社の dominance (支配力)です。現在、市場の約67.5%(約1,378億ドル相当、約20兆6,700億円)を一つの企業が占めており、この企業が万が一破綻した場合、暗号資産市場全体、そして伝統的な金融市場にまで影響が及ぶ可能性があります。これは、リーマンショックのような金融危機の再来を招きかねない、とFSOCは警鐘を鳴らしています。
透明性の欠如と規制の必要性
さらに、多くのステーブルコイン発行体が、十分な規制の枠組みの外で運営されていることも問題視されています。現状では、一部の発行体が州レベルの監督下に置かれているに過ぎず、透明性も低い状態です。特に、発行体の準備金や運用状況に関する情報開示が不足しており、市場の健全性を損ないかねません。また、詐欺や金融不安定化のリスクを高める要因にもなりかねません。FSOCは、投資家と消費者を保護し、透明性を高めるために、包括的な規制の枠組みが必要だと訴えています。
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FSOCが求める具体的な対策
FSOCは、ステーブルコイン発行体に対して、連邦レベルでの包括的な規制の枠組みを導入するよう議会に求めています。具体的には、ステーブルコイン発行体の prudential standards(健全性基準)の強化や、ステーブルコインの発行・償還における準備金の保有義務などを盛り込んだ法案の制定を目指しています。また、証券に該当しない暗号資産のスポット市場に対する明確なルール制定権限も求めています。もしも議会が動かなければ、FSOCは独自に、ドッド・フランク法に基づき、ステーブルコイン発行体を「システム上重要な金融会社」に指定したり、ステーブルコインの活動を「システム上重要な決済活動」に指定したりするなどの措置を検討する可能性を示唆しています。
ステーブルコインの未来
ステーブルコインは、その利便性から、今後ますます普及していく可能性があります。しかし、同時に、FSOCが指摘するようなリスクも孕んでいることを忘れてはなりません。健全な発展のためには、適切な規制と透明性の確保が不可欠と言えるでしょう。今後の動向を注視していく必要があります。
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